第11章 crown
突然、腕を掴んでいた嘉宗の手から力が消えた。
そしてバタリと倒れ、灯路みたいに白い羽織が赤く染まっていく。
「…っ!?」
嘉宗の死を受け入れるより先に私は艶斬を抜いて何も考えずに振りかざした。
刃が柔らかい固形物を斬った感覚がして、足元を見るとあの青い怪物が首を切られて倒れている。
「…っハァ…ハァ…。」
殺った…?と肩で息をしていると背中と左肩に鋭い痛みが走った。
「キャッア゙ー!」
前と後ろから二体の怪物に同時に攻撃されたのだ。
パックリと裂けた背中と肩の肉の隙間から濃い鮮血か溢れ、痛みに意識が飛びかけた時、肩を切った奴の腕が巨大化して私の体にその拳を叩き込んだ。
メキッバキッと身体の中から嫌な音が耳に届いて、私はそのまま何枚もの壁を突き破って外まで吹っ飛んだ。
最悪な事に、殴られた衝撃で艶斬が手から離れてしまった。
刀を失い痛みに絶叫する体ではもう何もできず、壊れた壁の残骸に紛れて倒れたまま遠のいて行く意識。
「…た、す…て…。」
助けてと言葉にならない声を誰に届けようとしたのか。
嘉宗、愛、灯路、丞…姿を見ることができなかった父と母…。
こんな最期だなんて…別れの言葉も言ってないのに…。
(艶斬…お願い…助けて……。)
靄のかかった視界に黄金の光が広がる。
…それは私の両手の刺青の光だった。
第二段階まで霊圧が解放されたのだ。
麻痺して動かなかった体に力が漲って、一時的だが痛みも引いた。
(私しか生きてない…戦わなきゃ…ここで死ねない…。)