第3章 blue
「誰と話をしようか……。」
四十六室に着いたのはいいけど、
まだ対談する相手を決めていなかった。
四十年も前のメンバーがいるのかどうかも分からない。
長い廊下をフラフラと行ったり来たり。
(話がつきやすい人が良いかな。)
相手が決まり、目的の場所を目指そうとした時
「雲雀…?」
何者かに後ろから声を掛けられた。
もしかして………
振り返った所に居たのは
「彩李…?」
間違いない。
私より少し背が低くて
可愛らしい顔立ちに、
ピンク色の瞳と腰近くまである鮮やかな髪。
私の幼馴染みの彩李。
「やっぱり雲雀だった!本当に久し振りだね~!」
「…うん。」
「雲雀がいなくなってから王族のあッ……!」
ハッとして慌てた様に口元を押さえて周りを見渡す。
「誰も居てないみたいだよ。」
「ふぁ~、危なかった…」
何故彩李が王族の事について詳しいのか。
答えは簡単。
彩李も王族の一人だから。
私とはまた違う血筋だけど、
幼い頃から仲良くしていた。
「もう色々大変だったの。」
「そうなんだ。彩李は四十六室の一員?」
「違う。あたしは今日ここに用があっただけ。」
「奇遇だね。私も言いたい事ぶちまけに来た。」
「雲雀、酷い目に遭わされたもんね。」
(……?)
「…別に気にしてない。」
「あ、雲雀が今いるって事は釈放されたの?いつ?」
「今日の朝。」
「そうなんだ…40年も辛かったよね…?」
「言うほどでも無い。」
「でもあたし、真犯人は雲雀じゃないって信じてるからね。」
「…そ。」
「あ、もう行かなきゃだね。お話できて良かったよ。バイバイ!」
元気良く手を振る彩李に私も小さく手を振って、また廊下を歩き出した。
(信じてる。そんなの言葉だけならいくらでも言えるでしょ。)