第3章 blue
「……ん…ちゃん、、、雲雀ちゃん?」
「あ、すいません。」
市丸の存在を完全に忘れて
自分の世界にのめり込んでしまっていた。
「どないしたん?えらい深刻そうな顔して。」
と、顔を覗き込まれる。
近い。
「何も。」
「嘘はあかんで。正直に言い?」
市丸は人の心が読めるんだっけ。
それでも私は本当の事を言う気は無いし、
今の私は殆ど廃人に近いから心なんてものはここに無い。
「虚退治に零番隊が援助しに行くのはよっぽどの事じゃない限りやめてもらおうと思って。」
「まぁ、確かにそっちにとったら迷惑やな。」
「ええ。虚ぐらいそこら辺の死神だけで殺しておいて欲しいです。」
「…で、他に言うことないん?」
「ありません。」
「ほんまに?」
市丸が自身の長くて少し骨ばった指を私の顎に添え、
猫の顎を撫でる様に動かし始める。
「しつこいですよ。」
私はパシンと冷たく手を払い除けて隊首室を後にした。
残された市丸はハァ。と溜め息をつき、
「もうちょっと楽しく話されへんもんかなぁ。
せやけど、今の雲雀ちゃんもなかなかおもしろいやん…?」
不敵な笑みを浮かべて一人、
手先の感覚の余韻に浸っていた。
私はというと、
さっきの出来事をキレイさっぱり忘れて
四十六室へ向かっていた。
もうすっかり辺りは暗く、丸い月の光が照らす道を瞬歩も使わずにただ歩く。
現世で聴いた歌を口ずさみながら一歩ずつ。
急がなくていい。
ゆっくり進んでいこう。
気持ちが焦ればきっと遠回りしてしまうから。
私は誰にも壊せない。