第3章 blue
励ましの言葉は嫌いじゃない。
だけど、本心で言ってない人が殆どなのが現状。
確かに私は40年前の事件の真犯人ではない。
だから私は絶望の淵に立たされたんだ。
「ここね。」
着いたのは、薄暗い廊下の端に佇む小さな部屋に続く扉。
コンコンとノックをすると
「…はい…。」
掠れた低いテノール。
扉を開けて中に入れば小さな明かりの灯る質素な部屋に、
ポンと置かれた椅子に座っている、髭を胸あたりまで生やした
ショボっとしたお爺さんが居た。
「お久しぶりです。私の事覚えていらっしゃいますか?」
「…あぁ…雲雀ちゃん、だったかの。」
「はい。」
「こりゃ、またえらく変わってしもうて…。」
「鶴さんもなかなかですよ。」
「ははは。私は歳をとっただけだよ。」
こういう所は相変わらずだ。
「……鶴さん、息子さんに伝えて置いて欲しいのですが…」
私は今日の出来事と私が釈放された詳しい訳を調べて欲しいと頼んだ。
「分かった。」
「よろしくお願いします。」
鶴さんに一礼して私は四十六室を離れた。
鶴さんの息子さんは四十六室でもかなり地位が上で、唯一私の犯行ではないと言い張っていた人だ。
その父親がなぜあの部屋に居たのか。
聞いた話によれば、暇人だとか。
家にいてもすることが無いからあの部屋でボーッとしているらしい。
どっちにしろ同じなのでは…?
でもきっと本人にしかわからない事だから干渉はしないで今まで関わって来た。
(…まさか釈放されて早々四十六室を監視することになるなんて…。)
いつになっても平和は訪れない。
少なくともあの時までは幸せだったのかも。
バカだったあの時までは………