第11章 crown
「愛!嘉宗!」
中庭に二人の姿を見つけてほぼ無意識に叫んでいた。
私に気が付いた愛も私に向かって何かを叫ぶ。
「…へ…?」
時が止まったみたいだった。
愛が瞬歩で消え、私の目の前まで飛んできて、何かから守るように私の肩を押した瞬間、愛の背中から血飛沫が舞った。
(あぁ…今、危ないって言ったんだ…。)
私は気が狂って眼前で起こった事を頭で処理出来なかった。
その代わり、さっき酷い耳鳴りで聴こえなかった、愛が叫んだ言葉を思い起こす。
呆然と立ち尽くしていると、私の後ろで剣を振る音がして本能的に振り返る。
「雲雀さん!しっかりしてください!早くここを出ますよ!」
斬魄刀を手にした嘉宗がもう片方の手で私の腕を掴む。
嘉宗の後ろには人の形をしたマネキンのような青い物体が転がっていた。
顔面には目も鼻も耳も無く、異様な大きさの口だけが特徴的だった。
(青い怪物…そんなの居たっけ…。思い出せないな…。)
上の空の私の腕を引っ張り、嘉宗が駆け出す。
「愛さんも、灯路さんも丞さんも霊圧が消えました。もう僕達しか居ないんです!僕達しか…っ!」
いつも冷静な嘉宗が珍しく動揺している。
横顔は今にも泣き出しそうな程辛く歪み、仲間の死が信じられないんだと思った。
「…私達…?ここに住んでた人達は皆死んだの…?」
「そうです!だから早く…っ!」