第11章 crown
更木の目がギラリと光った刹那、私も更木も急接近して木刀を交える。力では圧倒的に更木の方が上だが、技術面で優れた私は木刀に霊圧を纏わせて、強く打っても刀身が折れたりしないようにしている。
一撃一撃が重くて少しでも気を抜けば木刀を弾き飛ばされそうだが、東仙に稽古をつけてもらった無駄な力は入れずに戦う戦法で、私は更木の太刀をうまく反して少しずつ追い詰めていった。
「剣ちゃんもう負けそうだね!」
いつの間にか傍らに立って私達の戦いを観戦していた草鹿が叫ぶと、更木が苛立ったように渾身の一振りを頭上から落としてきた。
「わーっ!…危ない!」
木刀が鼻先に触れそうなギリギリの距離から一歩後ろに飛び退き、木刀を思いっきり更木の顔面向けて投げつけた。
「っ!そっちの方が危ねぇだろ!」
「だから危ないって予告したじゃ無いですか。」
「言うタイミングが紛らわしいんだよ!」
更木が躱した木刀が後ろの隊舎の壁に突き刺さったことはさておき、毎度の恒例、喧嘩終わりの言い合いが始まった。
「折角親切に知らせてあげたのに、もう言いませんよ!」
「まーまー。今回もせーせーの勝ちだね!」
「ありがとー!流石やちるは偉いね。」
「どーいたしまして!」
私達の話に更木が不満そうに「ケッ」と言って、ドサリとその場に胡座をかいて座り込んだ。
よっぽどムカムカしているんだろう。
「剣八さんも随分とお利口さんになりましたね。…で、次は…。」
「待ってたぜ雲雀!」
もう一人の戦闘狂の事を思い浮かべた途端に、そいつは私に飛び掛ってきた。気配がしてちょっと体を横にずらすと、木刀が私のすぐ隣の空気を斬った。
「一角さん少しは休憩下さいよ!」
「うっせぇ!さっさとやろうぜ!」
「もー!」