第10章 main
灯路が鬱陶しそうに髪をかきあげ、前方を睨むように呟いた。
釣られて私も木々の隙間から遠くを見ようと目を細める。
死覇装を着た人達が動き回っているのと、その中心には見たことの無い作りかけの建物が中に進むにつれて見えてきた。
(まさか、阿近さんもう指示出した!?)
阿近と話をつけてからまだ一時間も経っていない筈なのに、こんなことが有り得るのか…不審に思いながらも近づいていくと、皆私が知っている人達であることが解った。
「あ、瀬越さんお久〜。」
「ご無沙汰だね。」
一人が私の名前を呼んだことで周りの人も軽く挨拶をしてくる。
「ど、どうも。」
(十二番隊の皆さんだ…阿近さんなかなか仕事が早い。)
次々と運ばれてくる既に完成された部屋ブロックを積み木のように積んでいく方法で、どんどんボロボロの隊舎が建っていた場所に城を思わせる程の大きな白い建物ができていく。
「これ、隊舎…なんですよね?」
嘉宗が呆気にとられたように聞いた。
「うん。」
私もまさかここまで大きくなるとは思っていなかった。
突っ立っている間に時間だけが過ぎて、陽が沈む頃には十二番隊の人達も帰ってしまい、残った私達はそわそわと正面の木製扉を開けた。