第10章 main
丞の霊圧を辿りながらゆったりと皆で歩いていると、人だかりのできた大通りにぶつかってしまった。
「ここって劇場がある所やんな?今日何かあるん?」
「さぁ…?」
灯路に尋ねられるも私もよく知らないため、答えられずに口を閉ざしてしまう。
すると人々の大歓声が上がり、全員が大通りの向こうにある屋外の舞台に目を向けた。歓声のせいで途切れ途切れだが三味線の音らしきものも聴こえる。
「舞でしょうか?舞台の上に女性が居ますね。」
「み、見えへん…。」
背の低い愛は人混みに紛れると、つま先立ちをしても周りが見渡せない。
「肩車したろか?」
「誰があんたの肩に乗るか!」
「私がしてあげようか?」
「うんお願い。」
私の肩車はあっさりと受け入れて、身を屈めた私の首を脚で跨ぐ。
ちょこんと愛が乗っかって、私が立ち上がるとあっさり人々の頭の高さを越した。
「あ〜、ほんまや舞やな。」
愛は遠くまで見渡せるようになったのが楽しいらしく、
足をブラブラさせながら舞の鑑賞に浸る。
そうしているうちに数分が過ぎ、存在を忘れられかけていた人物の声に私達は一斉に振り返った。
「皆何やってんだ?材料見つかったのか?」
「あ、丞!丁度探してたの!」
「舞台鑑賞してたようにしか見えねぇんだが…。」
「それはともかく、隊長がアテを見つけたらしいので材料探しは終わりです。」