第10章 main
「そうしてくれると嬉しいです…。」
一旦止まって後ろを振り返るととても面白い光景が待っていた。
レンズ越しの目が細まっていかにも疲れた感じの嘉宗と、少し老けたように見える愛はともかく、灯路は全く息を切らすどころかピンピンしている。
「お前ら体力ないねんなー。ちゃんと運動してんの?」
腰に手を当てて背伸びをしながら灯路がお気楽そうに二人に話しかける。
「してるわ!あたしは一撃勝負やから持久戦は向いてないねん!」
「僕は戦いから程遠い環境に居たのでちょっと…。」
二人とも体力に自信はないらしいが、それでも零番隊に選ばれたからには他人より飛び抜けているはずなのだ。
しかしそれ以上に灯路は優れているということになる。
「灯路はいつも前線に出てたの?」
「いや、俺は隠密機動やったから追いかけっこが得意なだけやで。」
「戦うんとちゃうんかい!しかも追いかけっこって…追いかけっこって子どもか!」
「お前今突っ込む台詞考えてなかったやろ。」
「う、うるさっ…雲雀はよ行くで!」
「はーい。」
怒っているのか照れているのか、顔を真っ赤にした愛が鼻息を荒くしていじけたように先頭を歩き出す。
嘉宗は何か気になったことがあるのか、私の傍まで来てボソッと耳打ちした。
「雲雀さん、あれがいわゆるツンデレですか?」
「いや、違うと思う。」
「俺もちゃうと思うわ。あれはただのアホや。」
「あんたら聴こえとるで!あとさっさと付いてこんかい!」