第10章 main
「ほう…良いだろう。手続きは阿近に任せるヨ。」
「ありがとうございます!阿近さーん!」
涅に承諾してもらえたことで最初の難関を突破でき、
頭の中のイメージも大体固まってきた。
(後はあの隊舎がある所に研究室っぽい物を建てるだけ!)
私は涅の研究室を飛び出して、阿近を探しに再び廊下を走った。
雲雀が嵐のように現れて去っていった後、涅は棚からある書類を一枚引っ張りだした。
それは雲雀が技術開発局の職員として働くことになった時に撮った写真が貼られた、履歴書だった。
証明写真なのに、普通に笑った顔で写っている雲雀の写真を静かに眺め、零番隊の就任式が行われた一つ前の隊首会の話を思い出す。
「零番隊の目的…?」
日番谷が眉間に皺を寄せて総隊長に聞き返した。
「零番隊は言わば精鋭部隊と言ってよい。しかし、本来の役割は尸魂界の霊力の管理にある。」
「霊力の管理とは、つまりどういうことなのですか。」
砕蜂が尋ねた言葉に総隊長が目を瞑る。
「尸魂界の霊力は常に一定ではない。その霊力の周期に合わせ、調節して安定させるのじゃ。」
…涅は雲雀の履歴書を棚に直し、また研究に取り掛かった。
「全く…少し目を離した間に大きくなったものだヨ…。」
涅はこれから護廷十三隊の上に立つ存在にまでなった雲雀のことを嬉しいと感じつつ、二人の間に壁ができてしまったような距離感に奥歯を噛み締めた。