第10章 main
「ごめんごめん面白くてつい…。」
「丞は怖い顔しといてMっ気あるからな。」
灯路が丞の顔を見ながらニヤニヤすると丞の頬が赤く染まった。
「んな根も葉もねぇこと言うんじゃねぇ!」
「いや、もう今ので大体理解できたわ。」
「は!?」
愛までもが丞弄りに参加して更に上の展開を行き始める。
私と嘉宗は元々並んで歩いていなかったのだが、後ろで三人がワチャワチャし始めてしまったのでいつの間にか隣同士になっていた。
瀞霊廷の端の方まで来ると自然が豊かな場所になる。
寒さで緑が失われた木々の開けた所に延びている一本道に足を踏み入れた時、嘉宗がゆっくりと口を開いた。
「…こんな所に隊舎があるなんて、よくご存知でしたね。」
「探検してたらたまたま見つけたの。私も最初はビックリしちゃった。色んな意味で。」
「色んな意味でって…何だか悪い予感がするのは気のせいですか。」
「ん?多分当たりだね。」
私のあっけらかんとした態度と何か面白がっている様な言い方に嘉宗が言葉を失う。
(嘉宗はカンが鋭いのね。実物を見た時の反応が楽しみ…。)
不安そうに眉をひそめて歩く嘉宗の横顔を盗み見していると、
今まで後ろで戯れていた愛が叫び声を上げた。
「え!?ボロボロやんっ!」
ハッとして前方を見てみると、葉が無くなって禿げた枝の隙間から古びた建物がお目見えになっていた。
建物こそ隊舎の造りになっているのだが、遠い昔に使われなくなってしまった様で、窓は割れ扉や壁は今にも壊れそうな程ボロボロだ。
「雲雀さん…どうやってここに住むんですか…。」