第10章 main
「席次はもう決まっておるな。」
「あ、まだです。」
眼鏡の男性の言葉に身体の力が抜けかけた。
(まだだったんかい!)
後ろで「どうする?じゃんけん?勝ったやつから副隊長?」と急遽ルールを決めて「じゃんけん…」と席次じゃんけんが始まった。
数秒後にはもう決まったようで、総隊長が次のステップへ移るよう言う。
「では、五席から順に自己紹介を。」
後ろにいた青年が一人前へと進み、深く息を吸った。
「零番隊第五席、飯田 灯路(イイダ ヒロ)です。」
続いて出てきたのは女性。
「零番隊第四席、獅子野 愛(シシノ アイ)です。」
残り二人の男性も前に出る。
「零番隊第三席、吉川 丞(キッカワ ジョウ)です。」
「零番隊副隊長、林 嘉宗(ハヤシ ヨシムネ)です。」
皆私を中心にして一列となり、私をジッと見つめていた。
ポカンとしてから視線の意味を理解して慌てて口を開く。
「あ、この度零番隊の隊長を務めさせて頂きます、
瀬越雲雀です。」
よろしくお願いします、と頭を下げて礼をした。
力強く頷いた総隊長が新メンバーをぐるりと見渡すと、杖の先を床に叩き付けて告げる。
「では、各々任務に精を出すように。くれぐれも零番隊の名に恥じる行為をしてはならぬぞ。」
「はい!」
零番隊の文字にようやく実感が湧いてきたメンバーが、最初に来た時とは全く違った面持ちで凛とした声を発した。
その場に居た全員が予想もしなかった新たな隊の発足。そして隊員として選ばれた宿命を全うする義務に、不安と興奮が対立する脳内に確かに存在する喜び。
これからが出発点。
ここからが出発点だと気合いを入れ、五人は羽織に腕を通した。