第10章 main
「よし。今日はこれで終わりにしよう。」
「ふぅー…ありがとうございました。」
手に持った木刀を東仙に手渡す。
「筋が良くなった。動きも悪くない。」
「要さんのおかげです。」
「そうでもない。」
東仙は私に小さな微笑みを向けて道場から隊首室へと戻っていく。
私は汗をかいて温かくなった体を解して、東仙の背中に頭を下げて九番隊を出た。
「やっぱり冬は日が沈むのが早いなぁ。」
外に出た瞬間に冬のひんやりとした風が火照った頬に当たる。
夏ならまだ明るい夕方の時間だが流石にもう暗い。
八番隊に戻ろうと道を曲がった時、遠くに数人の人影が見えた。
(暗くてよく見えない…死神?じゃなさそう。)
自分の気配を殺して壁つたいにそっと近づく。
(一番隊のおじいちゃんの周りにいる護衛の人達だ…!)
変な布で顔を隠した集団の人がどうしてこんな所にいるのか…
どうやら何かヒソヒソと話し声が聴こえてくる。
(あの人達喋れるんだ…!)
衝撃の事実に驚きながらも、もう少し見ておきたい気があったが、京楽との約束を思い出して私はモヤモヤを抱えたまま気づかれないよう瞬歩でその場を去った。
そして八番隊に着いて京楽の元へと走る。
「春水さん!戻りましたー!」
「どうしたの雲雀ちゃん。やけに元気だね。」
京楽のすぐそばまで来た私に笑いながら話す。
「春水さん、あの、あの人達…。」