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陰陽の道≒式神との道

第9章 狂犬?注意-双子座一族の薙刀士-


仲間たちに『大型犬』呼ばわりされている彼だが、実は○○もこっそりそう思っているのはちょっと内緒だ。
なのに、その澄んだ瞳が、ふと、○○の前で陰った。

「陰陽師は、俺が怒った方が、良い?」

ふとそんな風に小首を傾げて返されて、それが何だか…自分より背も高くて身体も大きくて、ついでに年齢だって上なのに可愛く見える…なんて、うっかり考えている場合ではなくて。
○○は、彼が式神になったばかりの頃を思い出して、ぷるぷると首を振った。

「や、それは……あはははは」

思わず笑って誤魔化しかける○○に、いつもはぴん、と立っているナギの耳が、しゅん、と垂れる。

「噛みついちゃ駄目って、陰陽師が言った」

それがまた可愛い…とかいう場合ではこれまたなくて、○○はこくこくと頷いた。

「う、うん、そだね」

何が何やら、いつの間にかこちらの旗色が悪い…のかどうなのか。
いずれにしろ、確かにあの頃のナギには手を焼いたものだ、と○○は束の間、追想した。

人見知りは今も変わらないが、式神になったばかりの頃のナギは今の比ではないほど、何と言うのか…こう言っては何だが、扱いが大変だった。

何かあれば、すぐに相手に噛みつこうとする。
そうなれば当然、相手と喧嘩になる…という、そんな連鎖で、それはもう最初は毎日が大騒ぎだったのも、今では良い思い出…だろうか。

そして今、ナギはもう、無闇に誰かに噛みついたりしないし、怒ったりもしない。
元々、気性が荒いというわけではなく、つい噛んだりしてしまうのも、人見知りも手伝って他者と上手に付き合えないことが一因であるように思われた。

もっとも、ただ単に躾がなってないだけだ、という意見もちらほらあったが(そして○○的にもそう思わないでもなかったが)。

いずれにしろ、だからと言って、噛みついたり、諍いを起こして良いわけがない。
人見知りが起因していようと、躾の有無の問題だろうと、駄目なものは駄目だ。

そう言って、しつこく彼に諭した○○だったが、その頃から…というより、理由は分からないが、ほぼ最初から、気づいた時には、ナギは○○べったりの懐きまくりという有り様になり。
そして今に至る…のだが。
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