• テキストサイズ

陰陽の道≒式神との道

第8章 始まりは不本意な-羅刹鬼-


だからしょうがないじゃないか…という以前に、である。

「だから…ちょっと、も…っ離し……っ」
「断る、と先刻も言ったはずだが」
「………っ!」
「あの状況で熟睡とは、さすがだな」
「……ぅっ……」

羅刹鬼の言葉に頷くつもりはないが、しかし、○○的にも確かに…と思ってしまう。
何しろ、自分は羅刹鬼に……。

(接吻…されて……)

他にも…と、思い出すだけで頭が沸騰しそうになる。
なのに、その最中に自分は眠ってしまったのだ(多分)。

(え?ってことは……?)

その後、一体何がどうなったのだろうか。
○○は一気に青ざめた。
何しろ、何も覚えていないのだ(完全熟睡していたし)。
まさか…考えたくはないが……。

ふと掠めた嫌な予感のままに羅刹鬼を見た、途端、

「お前…俺を何だと思っている」

更には、熟睡した女をどうこうする趣味はない、とばっさり切り捨てるように返され、揚句、ぎろり、と睨まれた○○は何もなかったことに安堵する反面、彼の眼光に首を竦めた、と、

「鬼の腕の中で熟睡とは、豪気なものだ」

言いながら羅刹鬼は、今度は軽く笑むようにして、それから何故か○○から目を反らす。

そんな彼の、いつもとは違う様子に少し驚きつつ、しかしこんな風に言われてしまうと、○○としては何だか自分が悪いような気にもなってしまうのだが。

(確かに、いきなり寝ちゃったのは失礼かもしれないけど。でも……っ)

あの場合、直前まで羅刹鬼にされていたこと(しかも同意も何もなく)を思えば。

(私が謝るっていうのも、ちょっとどうなの?)

とも感じてしまうし。
それより、何より。

「だから…はーなーしーてーよー!」

いい加減にしろ!とばかり、○○は渾身の力でもって羅刹鬼をべりっと引き剥がして立ち上がった…が、意外にも、それは至極あっさりと成功し、半ば拍子抜けな○○の気持ちはそのまま素直に表情に出ていたらしい。

くつくつと喉奥を鳴らすようにしながら、羅刹鬼は腕枕しながら○○を見上げていた。

「お前は分かりやすすぎだ」
「う、うるさ……っ」

反射的に言い返そうとする常の○○のその背後に、いつの間に移動したものか、羅刹鬼の気配がして。
/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp