第8章 始まりは不本意な-羅刹鬼-
恐らくは、衣の下の肌までも朱色の波が及んでいることだろう。
羅刹鬼が○○の唇を奪ったのは、半ば衝動に近いものだった。
特段、その先を思惟してのものではなかった…はずだった。
だが…こんな様の娘を見ては、そうもならない。
誰でも良いわけじゃない。
己は何処かの色情鬼でもない。
しかし羅刹鬼の中で膨れ上がり、どうしようもなく暴れ出さんとする、その向かう先…望むもの。
それは……。
「俺を見ろ」
「………っ」
「俺だけを」
衣の裾から忍ばせた手に、○○の力が抜ける。
「…ぁっ……」
脚を絡め、身体を押し付けて密着させれば、少女の吐息はすぐそこだ。
「羅刹鬼さ…んんっ」
「他など…見るな……」
『お前は俺だけを見ていれば良い』
囁きは、○○の耳朶を掠めながら、そよぐ風の中へと消えていく。
陽光降り注ぐ大樹の陰で…その後、二人の間に何があったかは、誰も知らない……。
-終?-