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陰陽の道≒式神との道

第8章 始まりは不本意な-羅刹鬼-


それきり二の句が継げなくなった○○だったが、代わりに…という意図は、恐らく○○にはなかったに違いない。

ただただ混乱するままに、そこから離れたい一心での行動はつまり、いきなり立ち上がる、という挙動で。

どさっ

「つっ!?」

六大鬼、如何な敵にも隙など見せぬと自負する羅刹鬼をして、立ち上がった○○の膝枕から転げ落ちるという失態に見舞われた。

これはこれで羅刹鬼的には衝撃であり、矜持にも関わるものでもあったが、それこそ陰陽師の修行に明け暮れてばかりで、こんなことなど初めての、初心そのものの○○の動揺は羅刹鬼の衝撃の比ではない(かもしれない)。

真っ赤に熟れた顔で唇を押さえ、それから、燃え上がりそうになる顔が恥ずかしくて、○○は両手で頬を押さえながら羅刹鬼から更に離れようとした…が。

「やってくれたな」

腕を掴まれたことで、未だ動揺しながらも、○○は我に返ったように顔を顰めた。

「なっ、は、離して!」
「断る」
「なに、それっ!? あ、あんなことして!」
「あんなこと…とは?」

羅刹鬼が意地悪く『何のことだ』と問えば、○○は口をぱくぱくとして、自分の口からはそれ以上言えない。
分かっていながら追いつめる鬼に、○○はじりじりと後退しながら喚き散らした。

「羅刹鬼さんの意地悪、性格悪!いつも偉そうで、馬鹿にして……っ」
「終わりか?」
「い、いつも私のこと、子供扱いして!」
「否定はしないが、それは今から改める」
「なに、そ……っ」

苦し紛れに言い返す言葉を探しながら後退していた○○は知らず知らず、背後の大樹へ自ら近づくという墓穴に気付かぬまま。

そして気づいた時には、その太い幹へと羅刹鬼に縫いとめられ、二度目の…そして、先刻とは比べものにならない濃厚な接吻に唇を奪われていた。

「んんっ…んぅ」

それから…くちゅり、と水音が響いたのは、それからすぐ。
羅刹鬼の思惑のまま、○○は慣れぬ接吻に思わず唇を開いた瞬間、舌までも絡め捕られてしまっていた。
身体を押し付けられ、気づけば脚を絡められ……。

「羅刹鬼さ…っ」

驚きすぎているのか、○○の目には薄らと涙が滲み、頬は赤く熟れたままだ。
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