第1章 貪る狼-貪狼星-
“淋しそうな子供”ではなく、こうして笑顔を取り戻した今も、いや、今では殊更に。
“女”としての、○○を……。
「お前が笑うのが、好きだ」
「………っ!」
「あ、いや……」
自分で自分の言った言葉に、貪狼星は目を泳がせる。
だが、今夜を逃せば、星の位置が変わる。
それは自然の摂理…季節の変化だ。
かといって、このまま何の関わりも、絆も持たずに離れれば、再び星が巡るまで、自分が○○と出会えぬことを、貪狼星は焦れるほどに自覚している。
だからこそ、彼女の“式神”となって傍に留まることが出来る方法を考えた。
この少女を守れるよう、慈しめるよう、そして何より……。
「○○……」
「ぇ……ぁ、んっ」
やや強引に、熱く重ねられた唇に驚きながらも、○○はそれを嫌だとは感じなかった。
ただ恥ずかしくて、どうしたら良いか分からなくて。
そっと…恐る恐る、自分を抱き締める褐色の腕に触れる。
瞬間、彼がびく、と震えたが、互いの答えは、それで十分だった。
「俺はお前の…式となろう」
それは、○○が二人目の式神を手に入れた瞬間だった……。