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陰陽の道≒式神との道

第5章 蕩ける華-地獄鬼-


「無論、それなりに加減してやる」
「………」
「他の奴に指南は仰げても、俺とは向き合えもしないか?」
「そ、そんなこと……っ」
「じゃあ、良いよな?」

思わず言い返してしまった言葉に、地獄鬼が笑う。
やられた、と思っても、もう遅かった。

確かに○○は、陰陽師としての術以外も身に着けたくて、体術、武術、剣術と、それを得意とする式に頼んでは師事を仰いでいた。

それを地獄鬼は知っていて、しかし○○が地獄鬼に何かの教えを乞うたことはない。

まさかその腹いせ…なんて、そんなことはないだろう(地獄鬼がそんなことを気にしているとも思えない)、と一瞬浮かびかけた思考を振り払って、○○は刀に手を掛けた。

「余興程度なら……」
「ああ、もちろんだ」

こうなったら受けるしかない。
せっかくの花火見物が、どうしてこんなことになったのか。

式神達を引き連れる手前、人目のある場所から離れた小高い丘を見物場所に選んだのは、ある意味正解だったかもしれないが。

他の人間の目がないのは幸いにしろ、仲間の式神達からは無粋だ何だと野次が飛ぶ。
○○だってそう思うが、もう引くに引けないから仕方がない。

「ほんの手合せ程度だからね!」
「しつけーな。分かってるって言ってんだろ。くくっ、もしかして、そんなに俺とやんのが怖いのか?」
「ば、馬鹿にしないでよ!」
「そうそう。そうこねえとな、陰陽師さん?」
「……っ!」

地獄鬼の面白そうな表情を見て、完全にしてやられたと、○○は感じた。
でも、もう遅い。
それにこれは余興だ。
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