第14章 それは『悪戯』という名の…-具羅摩-
艶やかに仮装した具羅摩の傍らには、はにかむように微笑む○○の姿があった。
およそ『悪魔の寵児』と称されるに相応しからぬ存在と化した具羅摩の誠心は、時を経て、ようやく○○に届いたのである。
もっとも……。
「ねえ、具羅摩」
「ん?どうかした?もっと強く手、つないだ方が良い?」
「そ、そそ、そういうことじゃなくてっ!」
「ふふっ、真っ赤になっちゃって。可愛いね、私の○○は」
「ち、ちがうったら!そうじゃなくて!さっき、また悪さしてたでしょ!」
知ってるんだからね!と○○が頬を膨らませるのは、とある式神に具羅摩が例のごとく(しかも結構悪辣な)『悪戯』を仕掛けたことによる。
具羅摩の悪辣かつ非道な悪戯や遊びの数々が○○に向かうことはもはやないが、他にはその限りではない。
その辺りが何とも、やはり『悪魔の寵児』…なのかもしれないが。
「とにかく、駄目だからね!」
「○○がそう言うなら、加減くらいするけど」
「加減て……」
やめてはくれないんだ、と肩を落とす少女に、具羅摩は笑った。
「だって、あいつは男だから」
「……は?」
目下、具羅摩が悪戯と言う名の何かを企む標的は、『男』に限定されている。
早い話が、『悪魔の寵児』ゆえの『悪戯』ではなく、いわゆる『嫉妬』…だったりするので。
「こればっかりは、ね」
「…………」
「やめられそうにないんだ。ごめんね?」
片目を閉じて愛嬌を見せながら、具羅摩は膨れたままの少女の頬に、ちゅ、と音を立てて唇を寄せた。
「も、もうっ!」
途端に可愛い恋人が真っ赤に熟れてしまうのは、具羅摩にはとうに織り込み済みだ。
一年前の祭の夜からしばらくの間、悪魔の寵児と呼ばれる己との交わりを強要された日々がありながら、○○の初心さは今も変わらない。
それがまた、具羅摩には可愛らしくて堪らない。