第14章 それは『悪戯』という名の…-具羅摩-
常であれば、より強い刺激と愉しみを求め、わざと相手を傷つけるように抱くことも何とも思わなかったのに。
もっとも、不本意に抱かれた○○からすれば、行為そのものが苦痛であり、傷であるのだろうけれど……。
そこまで思いきたすことのできる具羅摩は、やはり変わったのだろう。
しかし、その変化も、その心も、ここに至っては容易に○○に届くはずもない。
自らの変化を自覚してからというもの、具羅摩は○○に触れてはいない、が、だからといって、その心が解けるはずもないのも道理である。
○○の幸を望むのなら、いっそ自らが身を退けば良い。
それが最良であろうことは、具羅摩も分かっている。
だがそれは、具羅摩にはできなかった。
○○は、いわゆる年頃の娘だ。
遠からず、いずれの男があの娘を手に入れる。
○○の肌に触れ…吐息を重ね、その身の内の奥深くまでつながるのだ。
このまま己が消えたなら、それは確実に、自分ではない誰かが……。
脳裏で、自分ではない誰かが少女に触れる。
それだけで、具羅摩は気が狂いそうだった。
「嫌だ!」
それは駄目だ。
できない。
許せない。
それが○○の幸せだと言われても、それだけは受け入れられない具羅摩の選択は果たして……。
○○の心を得ること…だった。
言葉にするのは容易だが、実のところ、具羅摩には何の目算もなかった。
何しろ自らの手によって、散々に打ち砕いてしまった全てを、改めて積み上げねばならないのだ。
更にはその上で、少女の心を自らに…など、無謀極まりない。
だが、それでも具羅摩はその道を選択した。
少女の心を得るには、見たいと願う笑顔を手に入れるには、具羅摩にはもう、他に方法が見つからなかった。
思えば、何か…誰かを力尽くで手に入れ、弄び、飽きたらそれで終わり…とは、確かにひどく容易で、楽だったのだと自覚する。
しかし、それでは駄目なのだ。
それでは、欲しいものは手に入らない。
自分が欲しいのはもう、そんな風に安易に手に入るものではない。