第14章 それは『悪戯』という名の…-具羅摩-
しかし陰陽師としての日々を健気に務め上げようとする少女は、具羅摩とのことは誰にも告げぬまま、平静を装うように他の式神へと微笑みかける。
その差を見せつけられるほどに、具羅摩は軋む己の心を自覚させられた。
自らの中に芽吹いたものを突きつけられ、自覚させられ、それでもなお、目を背けたそれに、具羅摩という『悪魔の寵児』をして、遂に観念するに至ったのは、南瓜祭の夜から、既に半年が過ぎようという頃のこと……。
しかし、事はそう簡単には終わらない。
具羅摩が己の想いを自覚し、観念しようと、そんなことは○○のあずかり知らぬことだ。
己の愉悦や快楽でなく、純粋に○○の笑顔が見たいのだと(とはいえ、他はどうでも良いという辺りは相変わらずだが)、○○のことだけはどんなことをしても守ってやりたいと、らしくなさすぎると分かっていても、そう思ってしまう。
どうしてこんなことに…と考えても、今更なほど、具羅摩にとって、○○は特別な存在となってしまっていた。
そもそも最初の邂逅は、天魔と陰陽師達との激戦の中……。
思った以上に抵抗激しい陰陽師達を見て、同じく『悪魔の寵児』と呼ばれる仲間と共に天魔から離反し、陰陽師側に着くことにした。
その証として、誰でも良いから陰陽師の式神になってやろう、と、本当に適当に指差した先にいたのが○○だったという、それだけだったのに……。
暇潰しの気紛れに、女の陰陽師の式神なんてものになったことも、過去に幾度もある。
その陰陽師を○○同様に抱いたことも、無論いくらもあって…しかしすぐに飽きて、遊びは終わり。
その繰り返しだ。
にも関わらず、○○だけが自分の中に住みつき、こともあろうに、こんなにも自分を翻弄しようとは……。
恐ろしい娘だ…とは思っても、もはや嫌悪の欠片も浮かばない自分はもうどうしようもないのだと、観念した具羅摩は苦笑するばかりだ。
悪戯も遊びも、もちろん今も好きだ。
だが、それとは違う。
○○は、特別。
○○のことは……。
「いとおしい……」
ぽつ、と知らずに零れたそれこそが、具羅摩の変化を如実に表していた。
思えば南瓜祭の夜を始まりに、幾度となく○○を抱いたが、その身を傷つけるような真似には、そういえば一度として及ぶことはなかった。