第14章 それは『悪戯』という名の…-具羅摩-
「具羅摩!いい加減に…!」
声を荒げた○○が術によって、式神である具羅摩を制しようとする…が。
「っ!?」
発動しない術に、○○は愕然とした。
「なん…で……」
陰陽師としての能力を、唐突に失ったわけでは、もちろんない。
なのに……。
理解できずに蒼ざめる少女を抱いたまま、ほどなくベッドへと辿り着いた具羅摩は、
ばさっ!
「ゃっ!?」
ぎしり…っ。
軽い少女の四肢を、半ば放るようにそこへ下ろす。
途端、○○は軋むベッドから足掻くように身を起こそうとするが、その隙を具羅摩が逃すはずもない。
「ぃやっ!」
「うるさい」
細い両腕を縫いとめ、自らの身体をぴったりと重ね合わせた。
「油断したのはお前自身。自業自得ってやつだ。だからおとなしく、私の悪戯を受けろ」
女言葉を常(と言っても何となく面白くて使い始めたのがそもそもの始まりだが)とする具羅摩の口調が変化していることに、○○も、そして…具羅摩自身も気づいていない。
無意識の内に、男としての欲が、紡ぐ言葉に現れつつあることを、具羅摩が自覚するのは果たして……。
「ゃ!ぁだ、やめてってば!こんなの悪戯じゃな…っ」
「うるさいと言ってる」
「んん…っ、ぅ」
強引に唇を奪われ、○○はもう、息もできない。
荒い呼吸を繰り返す少女の物慣れぬ姿が、具羅摩を異常に昂ぶらせた。
「はっ…、あははははっ」
高揚するままに笑い声を上げながら、具羅摩は○○の術が発動しない種明かしをして見せた。
「いざとなったらお前が術を使うなんてお見通しだ。だから、先回りした。それだけさ」
つまりは、○○が術を行使する前に、それを封じる為の術を、先んじて具羅摩が施していた。
ただ、それだけ……。
分かればなんてことはない。
簡単なことだ。
が、本来、主人であるはずの陰陽師の術を封じるなど、使役される立場の式神に、そうそうできるものではない。
にも関わらず、○○が気づく間もなく、あっさりと具羅摩がしてのけたのは、つまるところ。
「力の差…ってやつさ」
「………っ」