• テキストサイズ

陰陽の道≒式神との道

第14章 それは『悪戯』という名の…-具羅摩-


これまでの悪戯ならともかく(それはそれで問題ではあったが)、今の…こんな『悪戯』や『遊び』になんて、○○は付き合う気にはなれなかった。
第一…これは……。

(こんなの…遊びじゃない!)

当然、悪戯でもない。

猫舌なのに沸騰したスープとすり替えられてあわや大惨事だったり、方向音痴なのに同道した先でわざと迷わせてみたり……。

近頃ではそれも随分とおとなしくなったというのか、悪戯自体はなくならないが、最初の頃に比べれば穏やかになってきたように思えるそれに、○○は喜びと同時に、異なる感覚に惑わされるようになっていた。

勝手に部屋に入ってきては、手に…腕に…頬に、耳朶に、髪に……。
その時それぞれに、こちらが跳ね除けるより早く、具羅摩の手が、するり、とさりげなく掠めるように触れてくるようになったのは、いつからだろうか。

初めは、具羅摩が悪戯の手法を変えたくらいにしか感じなかった。
なのに…いつの間にか。

(なんで…こんな……)

こんな奴に、と思っても、どうしようもなかった。
それほど優しく、意味ありげに触れてくる…そして時には耳朶に甘く囁き、元気がない時には、らしくもなく慰めるような…労わるような言動さえするようになった具羅摩に、○○の胸は勝手に騒ぐようになってしまった。

今思えば、ちゃんと跳ね除けるべきだった。
相手は『悪魔の寵児』と言われる一人だ。
全てが今この時の為の、企みだったかもしれなかったのに。
気づいても、もう…遅い。

どきどきする自分を隠すだけでいっぱいだった。
何も知らずに、疑うことも…警戒すら、いつの間にか薄れていた。

男性であるのは確かなのに、女言葉を操る様に惑わされて、何処かで気が緩んでいたのだろうか。

そんな愚かな自分に今、具羅摩はこんな悪戯を仕掛けてくる。
それが無性に苦しくて、胸が痛くて。
だから尚更に、○○は暴れて、必死にもがいた。
/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp