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陰陽の道≒式神との道

第14章 それは『悪戯』という名の…-具羅摩-


確かに具羅摩は、○○が自らの力を持って勝利し、手に入れた式神ではない。
彼の方から気紛れに近づき、○○の式神におさまってしまったに過ぎない。
そして具羅摩の能力は、現在の○○のそれを上回っていた。
能力という点で言うなら、具羅摩のみならず、他の式神の中にも○○を遥かに凌ぐ者も一人ならず存在する。

それでも務めを果たすべく、自身よりも強大な能力を有する式神を仲間とする際には、相応の注意と覚悟を持たねばならない。
それは陰陽師として、基本中の基本だ。
なのに具羅摩に対しては、知らず知らず、○○はそれを怠っていたのか。
近頃では他愛ない悪戯をする程度だと、油断してしまったのか……。

そんな少女の心を見透かすように、にぃ、と具羅摩が口の端を歪めた。

「鈍い○○……。今まで、私が何度も悪戯しに部屋に入っても、お前は追い出すだけだった」

怒って追い出して、けれど、二度と入れないように術を施すとか、方法なんていくらもあったろうに、そうはしなかった。

「鈍くて、幼くて……」
「ぐら……」

こく、と息を呑む○○は、微かに震えている。
その微かな震えにすら、具羅摩の全身は愉悦を覚えて打ち震えそうだった。

「私のことを怒るくせに、何度も部屋に忍び込まれるなんて。無防備すぎ」

悪戯目的で○○の部屋に現れるという行為を繰り返すことで、あたかもそれが日常のように浸透させたのは具羅摩自身。
具羅摩の企図したことだ。

お陰で今日というこの日も、具羅摩は至極あっさりと○○の部屋に入り込み、そしてそれが露見しても、
○○は即座に拒絶を露わにはしなかった。
また悪戯しにきたのか、という程度の、そんな表情を浮かべただけで。

しかし、最初の頃と現在と…その『悪戯』がまるで異なっていることを、○○は何処まで理解しているのか。
変化そのものには無論気づいていることだろう。

だが恐らく…いや絶対に、その意図までは、この少女は知らないし、思いもしないに違いない。
だから…今日まで布石を打った。

『この部屋に、具羅摩が現れて悪戯するのはいつものこと』

○○が、そう受け取るように仕向けた。
それこそが具羅摩の狙うところであり、今この時、それは見事に成就したのだ。
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