第14章 それは『悪戯』という名の…-具羅摩-
人々は思い思いに仮装し、
『お菓子をくれないと悪戯するぞ』
が合言葉とかなんとか……。
渡来した珍しいそれに帝都の人々はもちろん……。
する…っ。
いつものように気配もなく、○○の部屋に現れ、その背後から手を伸ばしてくる存在。
『彼』が、この祭を見逃すはずもないと踏んでいた○○は苦笑いした。
「やっぱり…」
来たか…と振り返ろうとした○○だったが、しかし。
「お菓子はいらない」
「……え?」
すぐ背後に迫った気配…触れるほどに感じる体温……。
そして。
「悪戯させろ」
いつもと違う声色と口調、同時に、するり…と、具羅摩の手が○○の肩に触れ…撫でるように滑り降りていく。
「~~~っ!?」
確かに具羅摩は悪戯好きだ。
お菓子より悪戯を好むだろうとは思ったが、最初からそうくるとは思わなかった。
それに……。
「○○……」
ちゅるっ。
「ゃっ!?」
耳に舌を差し込んでくる、それ自体は今までもなかったわけではないが(それはそれで問題だし、もちろんその度に怒ったし、部屋を追い出したが)、吹き込まれる囁きが…その気配が、いつもとは違っていて。
「具羅摩、いい加減にしなさいよ!」
力任せにぐりん、と振り返れば、そこには南瓜祭の仮想に扮した具羅摩が優雅に立ち姿を決めて立っていた。
「今夜は祭の夜でしょ?とびっきりの悪戯をしなくちゃ、ね?」
言いながら、ふわり、と笑んだそれは妖しい艶やかさを湛え、○○は息を呑む。
動けない少女を狙い澄ますように、具羅摩は一気に距離を詰め、細い腰に腕を絡めた。
「二人きりの悪戯をしましょう?」
甘い囁きは、まるで悪い遊びに誘うように、惑わせるように。
「ぐら……っ」
反転した視界の中、○○は唇が塞がれる。
驚きと突然の出来事への硬直から立ち戻った○○は、連れ去られる先を察した途端に暴れ出した。
如何に自らの式神相手であろうと容赦なく術を用いてでも、具羅摩の『悪戯』から逃れようと足掻く。