第14章 それは『悪戯』という名の…-具羅摩-
今現在にしたところで、他の式神達相手には何ら変わらない具羅摩だが、ただ一人、○○という対象にだけは、その趣向というのか、方法というのか、とにかく明らかな変化が現れていた。
そしてそれは、具羅摩自身自覚している。
そんな具羅摩に、
「ご主人様だから、手加減しちゃってるとか?」
「らしくないだろ」
二人の寵児が口々に不満を漏らすのを聞いて、具羅摩は、ふふん、と口の端を歪めた。
「私は十分、愉しんでるって言ってるでしょ?」
そう、今までにないほど…この上なく……。
永く生きてきた分だけ、様々な…無論人間も含め、色々な生き物も、男も女も見てきた。
そしていつものように遊び、楽しみ、時には相手を壊してしまったこともある。
だが、そんな中にあって邂逅した○○に、具羅摩は異なる楽しみを見出したのだ。
無論、出会った当初はいつも通りの悪戯も遊びも○○に仕掛けもしたし、その度に○○は大騒ぎしたり、激怒したり、逆に凹んでしまったり、大泣きまでしたりと、それもそれで面白かったのだが……。
もっと違う楽しみを見つけたから…なんて、そんな風に言ったところで、しかし寵児仲間は納得しない。
「だったら僕が遊んであげよっかなー」
「それも良いかもな」
だったら代わりに自分達が…などと言い出した瞬間、具羅摩の纏う気配が変わった。
立ち上る気配も…向ける眼差しすらも一瞬の間に摩り替る。
まるで敵を見据えるような様相で、具羅摩は常とはまるで異なる、地を這うような…永く仲間としてありながら、彼らすら聞いたこともないような声で唸るように呟いた。
「あの娘に何かしたら、殺す」
S度合なら上を行くはずの魔具羅をして、具羅摩のそれは背筋を凍らせる。
何処か狂気紛いの本気を感じた土具羅ど魔具羅は、勝手にすれば、と捨て台詞を吐いて、逃げるように去って行った。
消え去る気配を見送りながら、具羅摩は、ふ、と息を吐く。
「全てはこれから…なのよ」
誰にともなく嘯いた、それから日を経ずして、街は西洋からわたってきたという『南瓜祭』という祭に彩られた。