第14章 それは『悪戯』という名の…-具羅摩-
ともあれ、寵児と呼ばれる連中は三名。
ささやかな慰めは○○の式神となったのは、その内の一人だけだった、ということだろうか。
(一人でもこんななのに……)
これが三人いたら…なんて、考えただけで○○はくらくらしそうだ。
でも、まあ、具羅摩が式神となった当初の悪戯の数々を思い出すだけで頭を抱えたくなるかつてを鑑みれば、今は多少なりともマシになった…と感じる○○は、果たして良い兆候であるのか、どうなのか。
何も知らずにそんな風に感じている○○の胸中などお見通しな具羅摩は一人、くす、と意味ありげに微笑む。
それはそれは、見惚れてしまいほどの美しい微笑だった……。
そして、今日も今日とて、あたかも当たり前のように○○の部屋に入り、腕に触れ、頬を掠め…まるでじゃれつくような『悪戯』を繰り返す具羅摩を、少女は息も荒く室外へと追い立てる。
それが今の、日課もどきな具羅摩の『悪戯』であり、具羅摩の楽しみ…愉悦……。
「ふふっ。ああ、面白い」
まるで子猫よろしく、ふーっ、とばかりにいきり立ち、総毛立つ雰囲気が何とも言えない。
面白くおかしくて…そして、そんな○○を見ると、どうしようもなく、
「ぞくぞくする」
他の誰にも覚えなかった、かつてない愉悦に具羅摩はご満悦だったが、異なる主人を持つ二人の寵児はそうではないらしい。
異なる陰陽師の下にはあれど、それとなく互いの動向を知る彼らは、ある日、具羅摩の前にふらりと現れた。
「何やってんだ、お前」
「何がそんなに面白いの?」
さも物足りなさげな顔で、呆れたように揃って肩を竦めている。
今の主人(陰陽師)を放ってきて良いのかと具羅摩が問えば、二人はこれまた素知らぬ顔だ。
「別に、構わん」
「ちょっと悪戯したら、何か寝込んじゃったし。全然平気」
などなど、二人は自分の主人となった陰陽師にも相変わらずの容赦のなさらしい。
にも関わらず、具羅摩の様子だけがどうも違っているようであるのが、二人にはお気に召さないようなのだが。
「私は私で、十分楽しくやってるわよ?」
と言いつつも、確かに○○の式神になってすぐの頃には、具羅摩も二人の寵児同様、思いつくままに行動し、楽しんでいた。