第14章 それは『悪戯』という名の…-具羅摩-
悪魔の寵児…そう称される彼らは『悪戯』が大好きである。
といっても、彼らのいうところの『悪戯』は一般的にいうところの『悪戯』に留まらない。
被害を被る者にとって、それはとびきりの不幸であったり苦痛であったりと、いずれにせよ、散々なものなのである。
そして、そんな反応を見て愉悦に浸る。
それが彼らの楽しみ…つまり『悪戯』…なのだ。
考えなくとも、こんな連中とは間違ってもお近づきになりたくないというのが誰しも正直なところ…と思われるが……。
かぷっ!
「っ!?ちょっ」
ぺろり。
「ゃっ!?もう、やめ…っ!」
「くすくすくす……」
「いい加減にしろー!」
耳朶を甘噛みされ、驚いて硬直したところを、今度は項をぺろり、と舐められ、わなわな震えているところへ、耳元でくすくす、なんて笑われたりしたら誰だって鉄槌の一つや二つ、というわけで、○○の拳が炸裂!するはずだったが、それは見事に空を切り……。
「…………」
むぅ、と悔しさに面を顰める少女に彼は、またもくす、と笑った。
そんな彼の名は、具羅摩……。
噂に名高い(?)、悪魔の寵児・三人衆の一人だ。
○○にしても、自ら進んで彼を式神にと望んだわけではなかったはずが、何故か○○の式神と化しているのは、ひとえに彼自らがそれを望んだことによる。
天魔との戦闘の際、本来天魔側にいたはずの寵児ら三名は、予想外の陰陽師達(もちろん○○もその場にいた)の激しい抵抗を前に、何を思ったのかあっさりと天魔を見限った。
しかも、つい先刻まで敵対していた存在へ…寵児達はそれぞれ異なる陰陽師へと下った。
その際、何の気紛れか、具羅摩が下った陰陽師が何故か○○だった…というわけなのだが。
戦闘中のどさくさで、今から味方してやると言われては、一人でも多く味方が欲しいという中で彼を拒む道理もなく。
結果…今に至る、というわけだ。
世間一般、他の陰陽師達に言わせても、己の式神にするには面倒すぎる存在の上位に位置するだろう彼を、○○にしても、よもや自分の式神にしようとは夢にも思わなかった。
が、これが現実というやつである。