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陰陽の道≒式神との道

第13章 遠い約束-氷獣鬼-


余談であるが…そんな後日のこと。
氷獣鬼の元に、新しい護符を求めた雷獣鬼が不意に姿を現した。

己の力の放出を上手く制御できぬ雷獣鬼に護符を作ることは、氷獣鬼にとっては造作もない。

そろそろ頃合いと思っていたとばかり、氷獣鬼は他の目(○○の式神達)の及ばぬ、とある林の奥へと誘導しながら、懐から新しい護符を取り出した…が、それを手渡す、その直前。

「あれ?お前、いつも周りに背負ってる雪と冷気はどうしたよ?」

少なくとも雷獣鬼の知る彼は、強すぎる力の具現…舞い狂う雪と凍てつく冷気とを、常に身に纏っていた。

それを、何もないかのように跡形もなく消し去っている様など、ついぞ見たことも聞いたこともない。
まして……。

「お前、今まではそんなこと、できなかったじゃねえか」

力の性質こそ違うが、己と同様、氷獣鬼もまた、身に纏い、放出する力を抑制するなどできなかったはずだ。
それを…と驚く雷獣鬼の前で、氷獣鬼は何ということもなさそうに宙を見上げた。

「新たに会得したに過ぎぬ」

などと至極簡単そうに氷獣鬼は言うが、

「んなこと、今まで一度もなかったじゃねえかよ」

鬼も獣も、己の力を誇示し、強さを示してこそだ。
それをわざわざ…護符で抑え込まなければ自らの身にまで危難が及ぶ雷獣鬼とは異なり、何ら力を抑え込む理由などないだろう氷獣鬼の考えが、まるで分からない。

雷獣鬼は、しばし唸るように首を捻り、しかし、ふと、何かを思いついたらしい。
にぃ、と意味ありげに口の端を歪めるや、

「分かった!女だな!?」
「……………」
「だよなぁ。せっかく女ができても、いっつも猛吹雪じゃ、交尾どころじゃねえ。ってことは、その女の為に要らん努力までして、てめえの力を制御するようになったってわけか」

へぇ、と、雷獣鬼は勝手に頷いている。

「なるほど、そういうことか。ま、良いじゃねえか。そうなりゃ、その女も抱き放題ってわけだ、なあ?」

次第に調子に乗って軽口を叩き始めた来訪者に、対する氷獣鬼は否定も肯定もしなかったが、ふと感じた気配に振り返った…時には遅かった。

「○○」

人目のない、林道の奥……。
姿の見えない氷獣鬼を捜して、○○はそこにいた。

目の前の古馴染みに気を取られて、○○が何処から話を聞いていたのか、氷獣鬼にも分からない。
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