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陰陽の道≒式神との道

第13章 遠い約束-氷獣鬼-


その後…○○は獣に連れ去られ、帝都から姿を消す……ことはなかった。

変わらず陰陽師を生業とする傍ら、しかし○○は突然、とある小犬を自らの部屋で飼い始めた。
それこそが、かの獣が姿を変じたものであることは、○○と獣だけの密事である。

陰陽師となり、日々努力する少女を…何より、これは(思う様○○を抱いた)後に知ったことだが、○○がかつての記憶を取り戻し、幼い頃の延長にも似た淡い感情…とはいえ、○○の心が己へ傾きつつあると悟った獣は、そんな彼女をすぐさま帝都から攫うことを躊躇ったのである。

心から想うからこそ、力で○○を妻として連れ去ることを、獣は良しとはできなかった。

とはいえ、いつまでも待つことはできないが、とは獣の胸中として。
獣は帝都に…少女の傍らに留まった。
ただし…式神としてではなく、小犬の姿で。

無論、ひとたび○○に事が起これば、愛らしい小犬はたちまち強大な氷獣鬼へと立ち戻る…が、そんな事態は幸いにも、未だ陥ってはいない。

そんな優しい獣の想いに日々触れる中にあって、○○の心は、幼い日とは異なる想いに色づいていく。
それを驚きながら…戸惑いながらも、自らの気持ちを自覚し、受け入れた少女は…やがて……。

再会した『あの日』を境に、自分に触れようとしない氷獣鬼の優しさと、しかし切なさを孕んだ眼差しとに、○○は自らの意思で、氷獣鬼にその心と…そして、己の身を委ねた。

以来、誰もが寝入る夜陰、可愛らしいばかりの小犬が氷獣鬼と化し、夜毎、○○を優しく組み敷いては、淫らに溶け合うことを知るものはいない。

「ゃっ…ちゅん太が…おきちゃ…ぅ」
「心配いらぬ。あの雀は朝まで目覚めぬ」
「ぁ…っ、はっ…」
「雀のことなど…考える、な…っ」

ぐちゅっ!

「ひぁ、ぁっ…ぁっ!」
「我だけを感じれば良い」
「ぁっ…もっ、やきもち…っ」
「…………っ」

じゅぷっ!

「ゃぁっ、ぁ、んっ」

柔らかい…ふわふわとした毛に覆われた、ちょっとやきもち焼きで強引な恋人の愛情を全身に感じながら、○○はぼんやりと思った。
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