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陰陽の道≒式神との道

第13章 遠い約束-氷獣鬼-


『幼き者よ、名はなんという?』
『……○○』

『うぬを助けてやろう』

不意に現れた知らない大人。
知らない大人達に引き渡される自分。
代わりに何かを受け取って、嬉しそうにしていた…両親の笑顔……。

『私は、いらない子なの』
『そのようなことはない』
『あるもん!』

『我にはうぬが必要だ』
『ほんと?』
『我は偽りなど言わぬ』

『名前、なんていうの?』
『氷獣鬼…と、皆は呼ぶ』
『ひょうじゅう……?』
『くく、うぬには言いにくいか』
『ひょう…じゅう…。じゃあ、ひょう…さん!』
『………好きに呼べ』

『我が力は辺りを凍てつかせてしまうゆえ、うぬをも凍えさせてしまうが…これならば、温まろう?』
『うん!ひょうさんあったかい。ふわふわー!』
『そうか』
『うん!』

『いっそ、このまま留めてしまいたが、うぬは未だ幼い。ゆえに○○よ…今は、うぬを仲間の元に帰してやろう』
『え?』
『成長した暁に、我は再びうぬの前に現れよう』
『また、会える?』
『そうだ。その時には、もはやうぬを離しはせぬ』

『私のこと、一人にしない?』
『決してせぬ。ゆえに…約束だ。うぬが成長した折には、うぬは我のものとなると』
『うん!』

『その時には、うぬは我と共に、同じ時を生きるのだ』
『同じ……?』
『そうだ。嫌か』
『ううん。一緒が良い』
『良い子だ……』

『では…約したぞ。その時にこそ、我はうぬを貰い受けよう』


駆け巡るそれは、時間にすれば瞬きの間……。
○○は、かつての全てを思い出していた。

自分を何処かへ連れて行く見知らぬ大人から何かを…今にして思えば、恐らく金銭を受け取っていたであろう両親の喜色に、子供心に傷ついた…あの時……。

貧しい日々の生活…多くの兄弟達。
家族が暮らしていく為に必要だったろうそれは、両親にとって…家族達にとって救いだったかもしれない。
けれど、それゆえに家族から引き離され、何処とも知れぬ場所へ見知らぬ大人達によって連れて行かれる。

あの瞬間の不安と怯え…何よりも、両親に捨てられたのだと感じた衝撃は、表現のしようがないほどだった。
そのせいなかどうか、やがて帝都に辿り着いても、修業にも、自分と同じ境遇の仲間にも一向に馴染むことができなくて。

そうして逃げ出した先で助けてくれたのが、目の前の獣…だったのだ。
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