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陰陽の道≒式神との道

第13章 遠い約束-氷獣鬼-


長い爪を蓄えた獣の腕が○○を捕らえ、何処かへと歩く出す、と、すぐに見えてきた扉の一つを器用に開く。
出会い頭にすぐさま殺すことなく、わざわざ場を移した獣の意図が、○○には分からなかった。

「ここは…音を遮る効果があるらしい」

沈黙する○○を部屋に引き込みながら、獣は小ぶりなその部屋を見回している。

「外からの音は無論、内の音も洩れぬ仕組みだそうだが」

術も用いずにこのようなものを造ることができるものなのか、と、獣は妙に感心しているようだった。

「人間とは次々に新たなるものを作り出していく。空恐ろしいものだが……」

見回したその室内…その構造に獣は息を吐き、やがて○○を見据えた。

「この場なれば、良かろう」

結界を張るまでもない、と続いた嘯きに、やはり自分は殺されるのだと、○○は身を固くした。
ここに連れてきたのは、外に悲鳴が洩れたりしない為…だろうか。
だが、そもそも鬼が、そんなことを気にするものだろうか。

ぐるぐる巡る思考は、現実逃避するかのように、○○の中で渦を巻く。
しかし、そんな疑問は、すぐさま霞の内に溶かされることとなった。

「っ!?ゃっ!?」

唐突に衣を剥ぎ取られた○○は、晒される素肌を隠すことすら許されぬまま獣の腕に抱き取られ、すぐ傍にあったソファに押し倒された。

圧し掛かってくる獣に、○○が咄嗟に両手を伸ばせば、その掌は、図らずも白銀の毛に触れる。
瞬間、まるで何かが流れ込んでくるかのように、○○の中で甦るものがあった。

(この感触…知って、る…?)

それはあたかも走馬灯のように、○○の中で足早に浮かんでは消えていく。
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