第13章 遠い約束-氷獣鬼-
自身の意図に関わらず周囲を凍てつかせてしまうという身でありながら、自らの毛の中に包まれば温もることも叶うであろうと、泣きじゃくる自分を抱き寄せて温め、慰め、やがて、そんな獣に懐いて甘える子供の相手さえしてくれた。
(私………)
獣の告げた『約束』の意味するところなど、幼い自分は何も分かっていなかった。
でも、今なら分かる。
『迎えに行く』
『ずっと共に』
その言葉の意味するところは恐らく…その、伴侶となること……。
そして。
『同じ時を重ねる』
というそれは、恐らく……。
獣鬼の寿命は、人間よりも長い。
異種である互いが共にあるだけでは、いずれ人間が先に老い、逝ってしまう。
だから、獣は言ったのだ。
『同じ時を重ねる』と……。
詳しい方法は知らないが、強力な鬼の中には、種の異なる存在に自らと同様の長寿を授けたり、鬼自らの生命と繋ぎ合わせることで、同じ時間を長らえさせることができる者もあるという。
もちろん容易にはできぬ、高度な術だとも聞いているが、この鬼には、それができるということなのか。
しかし獣は、そんな僅か数瞬の間の思考すら、少女に与えてはくれなかった。
べろりっ。
「ひゃ、ぁっ!?」
顔中を舐められ、思わず開いた○○の口から覗く小さな舌を、獣のそれが器用に絡め取りながら、ぺちゃぺちゃと音を立てて口腔を舐めまわしていく。
「ふっ…ぅ、っ、ぁ…ふ、ぁ…っ」
ぴちゃ……っ。
ちゅくっ。
唾液が二人を濡らしても、獣は頓着せずに○○の口腔を味わい、前足は爪を立てることなく○○の膨らみを押し包み…揉み解していく。
その手は○○の四肢をまさぐり、大きな舌はその肌を味わうように全身を這い巡った。
「ゃっ…ぃや、ぁ、ぁっ!」
殺されるのだと思った。
この獣に食われてしまうのだと…思っていた。
けれど、そうではないのだと語る自らの記憶に、○○は獣への恐れ以上の驚愕に晒されていた。
(こんな…ことって……)
思えば、鋭いその爪を突き立てるだけで、獣は自分を殺せるだろう。