第12章 唯-小鳥遊正嗣-
「ゃぁっぁ!ん…ぅっ、ぁ…っ、だ、めぇっ!」
「……っ、○○っ」
「だ、め…っ、そ…な、お、くっ、ゃ…ぁっぁ、も…わか…な…っ」
目の前がちかちかして、意識が白く爆ぜていくのを感じて、○○は髪を振り乱した。
既に何が何だか分からないほどなのに、あの夜以上に激しく求められているのを感じて、○○は全てが溶けてしまう錯覚すら覚えていた。
「んぁ、あっ、ぁっ…たか…な…っ、は、ぁっ!」
分からなくなりたくない。
ちゃんと、覚えていたいのに。
それができなくなりそうで。
「ゃっ…ゃっ、また、わか…なく、なっちゃ、ぅ…っ」
だから、一生懸命そう訴えるのに。
涙でぐちゃぐちゃの向こう側では、彼がとても嬉しそうに微笑んでいた。
「良いよ…何もかも、分からなくなってしまえば良い」
「そ…っ、な…」
「考えるのではなく、感じてくれれば良いんだ」
「ぁ…、ぁぁっ」
「そう…もっと、私を感じておくれ。それに……」
くす、と微かに笑った、その後の言葉を、○○は確かに聞いた気がした。
「それに…これからは幾らでも、こうして過ごせるのだから……」
それきり白く弾ける感覚に、○○は意識を手離した。