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陰陽の道≒式神との道

第10章 標的捕捉-諜報部隊・隊長-


そうと知っていて訊ねながら、男は少女の部屋の内へ、するり、と滑り込んだ。

と、室内に居合わせた式神(もちろん男)が、現れた男に警戒…というより、敵愾心を露わにする。

そんな彼らも○○によって札に戻され、ほどなく鞄にしまわれる…が、その僅かの間に、男の頭は連中をしっかりと記憶した。

暗殺は…主に人間相手の代物だが……。
式神相手でも、できることはまあ、色々あるものだ。

愛しい少女とのひとときが過ぎ、別れを惜しみながら自らの住処へ戻った男は、ぎし、とソファに身を沈める。

やや不穏な思惑を抱くその手には、使い慣れたそれとは異なる、不思議な色合いを湛えた弾丸が一つ……。
傍らには、同じものが幾つも箱に収まっていた。

「人ならぬものにも効果がある弾丸…か……」

そういうものが世に存在しているのは以前から知っていたが、自分には関わりなかろうと、これまで手に取ることはなかった。

だが今、それは…一箱だけ、とはいえ、男の部屋に静かに横たわっている。
もっとも今のところは、何をするつもりもないが……。

(何より、式神に何かあれば、○○を泣かせることにもなるしな)

だからこそ安易に手出しする気はないし、そもそも式神とは陰陽師を守る存在だ。
これを損なえば、陰陽師である○○を危険に晒すことにも繋がってしまう。
しかし……。

少女との逢瀬は別として(時には先刻のように式神と鉢合わせてしまうこともあるが、基本は二人きりなので問題ない)、街中で偶然、彼女と出会った瞬間の、あからさまな威嚇を見せる式神の顔ぶれは、ほぼ決まっている(ちなみに全て記憶済だ)。

しかも、そのどれもが男の式神ときた。
人間の男と大差ないその姿で、日々○○の傍らにいる連中。

○○を守るべき重要な存在でもあるがゆえに、何もせずにいる今ではあるが……。

(あまり目に余るようなら……)

さて、どうしてやろうか……。

思案する男の目には、○○の知らぬ暗い光が束の間、浮かんでは…消えていく。

それは…○○を手に入れ、愛しすぎるがゆえの男の一面だったが、浮いては沈む思惑が現実となるか否か…その行き着く先はまだ、誰も知らない。



-終-
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