第10章 標的捕捉-諜報部隊・隊長-
それは、愛らしい蝶が、蜘蛛の巣に掛かるかの如く……。
「ぁっ…もっ、ぁ、ぁっ…かえら…な…っ、ふ、ぁっ」
「まだ帰さないと言っただろう。後でちゃんと送ってやる。だから今は俺のことだけ、感じてろ」
「んぁっ、ゃぁ…、ぁっ、そ…な、もっ…たいちょ…さっ」
「違うって言ってるだろ?ったく、ちゃんと覚えるまで、本当にここから出してやらないからな」
もっとも、○○がちゃんと名前で呼んだとしても、容易に離せないだろう自覚がある。
この…愛しすぎる少女を、ひとまず帰してやれるのは、果たして何時間の後だろうか。
とは、音に託されることのない、男の胸の内だけの嘯き……。
艶めかしくも甘やかな、蜜なる愛欲の終わりは、未だ見えそうにない。
窓の向こうでは未だ雨が降りしきり、二人を閉じ込めるかのように、いつまでも…静かに煙っていた。
-終?-