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陰陽の道≒式神との道

第10章 標的捕捉-諜報部隊・隊長-


とある財閥が作り上げた諜報部隊、その隊長の任を負う男の役目…それは諜報活動はもちろんだが、幾つもある他の部隊と異なるのは、時として要人の暗殺をも担うこと、だった。
彼がその任について、既に数年。

消耗する弾薬は極力少なく…という上からの命令を律儀に守るつもりもないが、その腕はほぼ百発百中。

彼の標的となって無事に長らえた者はなく、近頃では本業であるはずの諜報活動より暗殺を生業としつつある彼の中にも、もはや常人が持ちうるような感傷というものは失せつつある。

少なくとも、彼は自らをそう評している…が、任務後の煙草をどうにもやめられないのは、彼の心に、人間らしいものが息づいている証かもしれない。

そして、そんな、とある月のない夜。
男と、少女は出会った。

男は、ある要人暗殺の為。
そして少女は、付近に現れるという怨霊を追って……。

そうして現れた怨霊が、男の標的である要人に襲いかかった時、少女は男の標的を守るように怨霊に挑み、その夜暗殺するはずだった男の計画は頓挫した。

本来なら、その少女はとんだ邪魔をしてくれた相手のはずだが、式神と共に怨霊に挑む少女の姿は、不思議と彼の興味を引いた。

女の陰陽師を見るのは別段初めてではなかったが、何故か興味を覚えた少女へと、初めに声を掛けたのは男の方からだった。

少女は、○○と名乗った。
陰陽師をしているといい(男からすればそれは一目で分かっていたが)、後ろ暗く何かを隠す風もない。

だが対する男は、名も、その生業とするものも、何一つ告げなかった。

ただ、それでは呼ぶ時に困るというので、部下からは『隊長』と呼ばれている、ということだけ、男は○○に教えた。

『隊長』だけなら、何の隊を指すものかも分かるまい。
それに、そう会うこともないだろう。

事実、陰陽師と暗殺者の邂逅など、そう頻繁にあるものではなかったが、今はこの辺りに巣食う怨霊を退治しているという陰陽師と、諜報よりも、もはや暗殺者と称しても良いだろう男。

どちらも夜陰の行動時間が多いとなれば、その『偶然』が生じる頻度も上がる。

無論、『偶然』はそう多くはなかったが、いつの間にか、互いの姿を認めると、言葉を交わす関係になっていた。
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