第9章 狂犬?注意-双子座一族の薙刀士-
(何考えてんの、私!は、はしたない~~っ!)
とはいえど、○○の本当の悩み(?)は、実はそこではない。
それは……。
「あれ?○○?こんなところでどうしたの?もしかして具合悪いの?気分悪い?」
「ナギ。……っ!」
○○を見つけ、様子がおかしいことをすぐに察してナギの顔が曇る。
そんなナギの優しさは、いつだって○○を癒してくれて、嬉しくなる。
でも。
でも…なのだ。
(ぅわっ、み、見ちゃった!)
他者に言わせれば『何を今更』というやつなのだが、ナギの出で立ちは、下はちゃんと穿いているが、上半身は裸同然だったりする。
他にもそういう出で立ちの式神は幾人も存在するし、ナギの姿もとうに…婦女子としてどうかとは思うが、陰陽師としては慣れるしかないわけで、今ではしっかり免疫ができていたはず、だったのだが……。
(や、やっぱり、駄目だ)
ナギと恋仲になってからというもの、上半身露わな彼の肌を見るのが、○○は無性に恥ずかしくて堪らなくなってしまった。
前は平気だったのに、とか、どうして今更…と自分でも思うのだが、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
(だって…思い出しちゃうんだもんっ)
彼の肌を見てしまうと、彼との夜を…その胸に抱かれた自分を思い出してしまって、○○はもう、どうして良いやら分からない。
そんなことを思い返してしまうこと自体、『はしたない』と自戒もするのだが、羞恥に染まる自分を、少なくとも今の○○にはどうすることもできなかった。
なので叶うことなら、彼にはちゃんと服を着て欲しかったりするし、それとなく言ってみたこともある…のだが、
『どうして?今まで何にも言わなかったのに?』
という、至極ごもっともな疑問を返されてしまえば、○○には返す言葉がない。
かといって、ナギに抱かれている時のことを思い出しちゃうから…なんて、そんなことは絶対に。
(言えるわけないし!)
それこそとんでもない、とばかり、○○の悩みは解決の糸口が見つからないまま…だったのだが。