第9章 狂犬?注意-双子座一族の薙刀士-
数刻後、目覚めた○○に、しかし、ナギが式神の任を解かれて放り出されることはなかった。
もちろん、ナギのしたことは許されることではないと、当然の叱責は受けたが、その後に待っていたのは、予想外の顛末だった。
「何で、ちゃんと言ってくれなかったの?」
「え………」
「私…ナギの気持ち、全然知らなかった……」
つまるところ、あれほどの強硬に出たナギと同様…ではないようだが、○○の中にもまた、ナギへの好意が芽生えていた。
というより、平たく言えば、行為の間中、ずっと『好きだ』『愛してる』と繰り返され、言葉と身体の全てでもって熱烈な想いを注がれてしまった○○の心は、ナギの深すぎる恋情に少なからず侵食されてしまったらしい。
元より○○自身、ナギが女性の式神と連れ立っていた姿に胸を痛めていたことからして、彼を憎からず思っていた節は十分以上に見て取れる。
これをして、ナギの行為に『ほだされた』と称するべきかは不明だが、ともかくも、まだ互いに温度差はありながらも(言うまでもなく圧倒的熱量はナギにある)、片恋から始まった結末は、彼の今後の努力如何に掛かっている…ようである。
「でも、こんなこと、絶対、駄目なんだからね!」
「………………ごめんなさい」
『ナギ』こと、双子座一族の薙刀士。
彼の本当の成長は、まだ、これから……。
-終?-