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陰陽の道≒式神との道

第9章 狂犬?注意-双子座一族の薙刀士-


でも…と、翻ってナギは思った。

○○以上に想える相手なんて、自分にはいない。

この先も、それは絶対に変わらない。
それだけは、自信を持って言えるから。

なのに、その相手から離れるなんて……。
考えただけで、ナギは耐えられそうにない自分を感じた。

(離れたくない。離したくないよ、○○……)

それなら、このまま何処かへ攫ってしまえば良い。
不意に、心の中で、もう一人の自分が囁いた。

(誰も知らない場所に攫って、自分だけのものにしてしまえば良い)

囁く声は、自分であって自分ではないような、己の中の、深い欲望の誘惑だ。
こんな風に考える自分もまた、同じ自分自身……。

こんなこと、以前は考えたこともなかった。
これほど想ったこともなかった。

『図体は立派になっても、いつまで経ってもお前は子供のようだ』

一族が集い暮らす里で、いつかそう言われたことがあった。
だが同時に、こうも言われた。

『だがいつか…巡り合えると良いな』

何に巡り合えると良いと、その人は言っていたろうか。
今までは思い出そうとも思わなかったし、そんなことを言われたことさえ忘れていた。
でも……。

(そうだ……)

いつか告げられた、一族の年長者の言葉を、ナギは思い出した。

里での教育も適当に流して、ただ楽しく過ごすことばかりを優先していた…あの頃……。

同じ年頃の同族より出来の悪い自分。
そんな自分を見て、それでも彼は、優しく笑いながらそう言って…そして、里を旅立つ道を選んだ自分を見送ってくれたのだ。

(俺を…心も全部、成長させてくれるような、そんな相手に巡り合えると良いな、って、そう言ってたんだ)

○○に出会ってから、確かに自分は多くのことを考えたり、思うようになった。

そして、同じだけ悩むようにもなって、今までは無縁だった、心が苦しくなったり、痛くなったりすることも知ったけれど。

でも、それが大人になったということかは分からない。
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