第1章 今宵見る桃色に
戦時中は食べる物もろくにない
そこに食べる物があれば何でも縋るに違いない
きっと人間でさえ犠牲になることはあるだろう
皆、死に物狂いで闘っているのだからこういう事があってもおかしくはない
「あぁ…何が……お国のため…?」
その時は狂ったように我を失い
日本とアメリカに対する戦争の不満に嘆いた
どうしようもなかった
生き甲斐としていたものがついに皆、手が届かないところに行ってしまったのだ
「ああぁぁあぁ!!!」
何日かして声を出す気力もなくなった時
冷静になって我に返ることができた
けれど、もう何もないのなら生きていても仕方ない
そう思いながらも、やはりどこか近くにいるような気がしておぼつかない足取りで探し出す
「あ、あれ……夢…?」
気がつけば目の前に日本兵の軍隊が闘っているのが見える
ここまで来るのに死んでいてもおかしくないのに
辿り着くことができた
そこには、よく私が知っている人物が見える
きっと夢を見ているのかもしれない
望みすぎて、願いすぎてその人の幻が瞳にうつっているのだろうか
それならそれでいい
ここで出逢えたことが夢で最期の幸せだとするならば、あなたにもう一度話したい
駆けて、駆けてもう少しというところで私は何かにつまずいて地面に倒れる
すると、それに気づいたアメリカ兵がよく分からない言葉を口にしながら近付いてくるのが分かった
殺される!
急に恐怖心が一気に込み上げてくる
震える、震えてただ向けられた銃の先を見ることしか出来ない
その時だった
「あなたは何故こんなところに……」
視界を遮ったのは白い服
落ち着いて凛とした声
それは私が何よりも求めていたものだった
私が手を伸ばそうとした時
「くっ!」
一発の銃声が鳴り響いて腕を押さえてるあの人
片手に握られていた銀の刃は頼りなく落ちていく
嫌な予感が頭をよぎる
次に連発して銃声の音する
「がっ…くっ……」
目の前で最愛の人が苦しんでいる
こんな戦争なければいい
これがなければ私たちは笑っていられたのに…
急に怒りが込み上げてくる
もう怖がってはいられない
終わりにしなければ、この戦いを
そして歩き出した時
今までに聞いたことのない強い声が私を静止させた
「来てはいけません!寧ろ、来ないでください…」