第14章 腕前と衝突
翌朝
由太郎君は神谷道場に来た
朝早くに
低血圧の薫さんは、瞼をこすりながらやる気のない声で審判を務める
それが気に食わなかった弥彦君は、竹刀で薫さんの頭をはたく
「何すんのよ、このコは!」
「目が覚めたか、ブス!」
起こし方?はあれだが、薫さんは完璧に目が覚めたらしい
先ほどとは違って気合の入った声と少しの怒りが混じった声で審判をする
『あれ……?』
「あら?」
「おろ」
が、それは不発に終わった
由太郎君の竹刀の持ち方が違っていたからだ
左手と右手を近づけて持っていた
普通は左手と右手はつけず、、柄尻を握る
そっちのほうが窮屈にならず、振りやすくなるのだ
「お…俺は、いつも真剣一筋で稽古してるんだ!だから竹刀の持ち方なんて――――」
「真剣の持ち方も竹刀と同じはずでござるが…」
少しの沈黙が流れる
もしかしたらこの子……
「もしかしてお前…。今までの全部口だけで、ホントは剣術やったコトねーんじゃねェか?」
弥彦君の言葉に、あからさまに驚く由太郎君
図星なんだね……
雷十太は、由太郎君に稽古をつけてあげてないのかな
「新古流は日本剣術のための大事だって先生が言っているんだから、俺がわがまま言って邪魔する訳にいかねーよ」
本当は剣術の稽古がしたいんだね
そうだよね
無敵の剣客を目指すって言ってたもんね
「仕方ないわね。いいわ。せっかく来たんだから、今日は私が教えてあげる」
そう言って、由太郎君に剣術を教える薫さん
となると、きっと私たちの稽古は見れないと思うから
ここは緋村さんにお願いしようかな
「剣心、見るだけでいいから俺達にも稽古してくれよ」
弥彦君も私と同じ気持ちだったらしい
緋村さんは「おろ~」と少し困ったように笑っていたが
最終的には、ただ見るだけ、という形に収まり
私と弥彦君はお互いに竹刀を構える