第13章 雷十太と剣術
そのあと、私たち五人は帰り道をたどる
雷十太との話の内容を私は聞く
あとの三人は盗み聞きをしていたため、聞かなくてもわかっているみたいだ
どうやら雷十太は緋村さんを“新古流”に勧誘するために今日呼んだらしい
新古流には、型や技はなく、ただ“強い”ということだけが条件らしい
そして彼の目的は、全ての剣術の流派を根絶させ、自分の流派を日本剣術として再興することらしかった
それは、剣術を弱体化させないために
目指すのは、“無敵の剣術”
『……無敵の剣術』
頭の中で由太郎君の言葉がよみがえった
無敵の剣客を目指すと言って、雷十太を尊敬している由太郎君
別に尊敬することは悪いことじゃないけど
でも、由太郎君は雷十太の目的を知っているのだろうか
『勧誘には……』
「もちろん、断ったでござるよ。拙者は流浪人でござるから」
にこりと笑う緋村さん
私もつられて笑った
『……あの人に言えばよかった』
「何を?」
そうたずねてくる薫さん
緋村さん達も、私の方を向いてその答えを聞きたがっているようだった
私は、口角を上げ言った
『剣術は滅ばないし、弱体化もしませんって』
むしろ、誇りに思ってもいいくらいだ
世界中からも人気で支持されているみたいだし
それを知ったらきっと彼は根絶させようなんて思わないはず
強さは大切かもしれないけど
でも、強さではなくそれ以外の“何か”の方がもっと大事な気がする
その何かってのは、うまく説明できないけど
でも、そんな感じがする
「そうでござるか」
緋村さんは、私の顔を見て笑った
そして、目があったことを思い出して、心臓が破裂しそうなほど早くなる
この笑顔をわたしにだけ見せてくれたら、なんて考えてしまう
私のバカ、
そんなのありえないのに
私は、自嘲気味に笑みを浮かべた
たった一つの私の願い事は
きっと叶わない