第14章 腕前と衝突
それから数時間後
由太郎君は思った以上に上達が早く
今朝とは比べ物にならないほど様になっていた
『上達が早いね』
「へへっ」
嬉しそうな顔をする彼
剣術が楽しいんだろうなって思った
来た時よりもいきいきしているのがわかる
「ちょいと休憩――――。みんな、朝から何も食べてないからおむすびを作ったでござるよ」
緋村さんの両手には人数分のおにぎりがあって
誰かの腹の虫が聞こえたのが引き金となり、休憩することにした
「ほい、真愛殿」
『ありがとうございます』
緋村さんからおにぎりを受け取り、その場に座る
朝から何も食べていないおなかに、おにぎりを流し込めば
みるみるうちに膨れていく
やっぱりご飯って大事なのね
満たされていく感覚を感じながら、私は隣で同じくおにぎりを食べる由太郎君に尋ねた
『由太郎君は、どうして強くなりたいの?』
そう問いかけたら、彼は答えた
親父を見返すため、と
どうやら彼の父親は、武士の魂である刀を売り、商人に愛想笑いを浮かべ、頭を下げてばかりらしい
そんな父親に由太郎君は、剣一本で生きる真の士族の生きざまを叩きつけてやりたいらしい
そんな彼に薫さんは言った
稽古つけてもらわなければ強くはなれない
「由太郎君。よければあなた、神谷活心流に入門してみない?」
『それいいかもね。弥彦君と二人で競い合えば絶対強くなれるよ』
「俺が……ここに入門?」
少しだけ戸惑いの色を見せる由太郎君
なんとなくその気持ち、わかるかもしれないな
と、その時緋村さんが叫んだ
「みんな壁に跳べ!」
その指示に従ったと同時に、道場の扉は槍によって破壊された