第10章 動く理由
強い風が、吹き荒れた
この男を倒さない限り、観柳を追えないってことか
私は腰から、木刀を抜き構える
「ふっ、短剣か。そんなもので私を倒そうというのか」
『………』
「女とて手加減せん。行くぞ」
その言葉と共に、般若は飛び出す
それを私は避けた
つもりだった
『…っ!』
もろ、拳をくらってしまった
口の中で血の味がした
私は、木刀を握り直す
般若もまた、構え直す
拳法とは少し厄介かもしれない
でも、やられるわけにはいかない
だけど、力の差は歴然だった
圧倒的に般若の方が強くて
私はただただ、殴られてばかりだった
ただおかしいのは、彼の攻撃は避けれるスピードで、それを避けているはずなのに、当たってしまう
『ぐっ…。はぁ、はぁ』
その場に倒れ、私は身動き一つとれなくなった
体力も底を尽きていて、立つことさえもできない
「お前は、私のこの姿を見た瞬間から、私の術中に堕ちている」
私は視線だけ動かす
術中……?
般若の姿を見た瞬間ってどういうこと?
もしかして彼が来ている装束に何か秘密があるってこと?
腕にある横縞の入れ墨が関係している?
わからない
そして私は意識を手放した