第10章 動く理由
【佐之助side】
あいつがおはぎを持ってきて“いらねェ”って言ったら
大声出して、その迫力におされて、おはぎ食ったら
思った以上にうまくて
だから正直にうめぇって言ったら、見たことない笑顔でこっちを向くから
少し、驚いて、それと同時に“かわいい”って思った
そしてら心臓がありえない速さで脈を打つから
それに対しても驚いた
一人で百面相する真愛
でに、次第にその顔は赤く染まって
また“かわいい”って思ったりして
もしこれを恋だとか好きだとかぬかすんなら
俺は“NAME1#のことをそういう対象として見ているってことなんだろうけど
もし、そうだとしたら俺のこの気持ちは届かずに終わるんだって一瞬で理解した
なんたって、こいつは剣心のことが好きだからな
真愛自身、それを受け入れようとしていないし、気づかないフリをきめこんでる
その理由はなんとなくわかる
あいつは好きってことを否定するかもしれないが
目を見ればわかるんだ
剣心が好きだって、物語っているから
まだこいつに恋してるって決まったわけじゃねーから
振られるもくそもねーけど、
なんか悔しかったから、逃げ帰ろうとするあいつの細い腕を掴んで引き止めた
“相楽さん”と呼ばれるのが嫌だった
別に“相楽”って苗字が嫌なわけじゃない
むしろ尊敬している
隊長の苗字で俺自身を名乗れるなんて、そんな嬉しいことはそうそうない
ただ、呼んでほしかった
苗字ではなく、俺の名前を
耳まで真っ赤にさせて、下を向いて小さな声で俺の名を呼ぶ姿が愛おしいって思った
あぁ、やっぱり俺はこいつのことが好きなんだ
そう自覚したとき、もっと俺の名を呼んでほしいって思って、少しいじわるなことをした
真っ赤な顔をこっちに向けて名前を呼ばれたときは、心臓は爆発的は勢いで、音を鳴らした
たぶんあれは警告だ
これ以上はこいつを喰っちまうから離してやれっていう
叶わねねぇ恋だけど
だからって簡単に諦められるはずもねぇ
そんなの性分じゃねェから
だったらやることは一つだけだ
俺は俺のやり方で、あいつを振り向かせる
ただ、それだけのことだ