第9章 剣心組vs御庭番衆
そのあと、恵さんが道場にしばらく住むことが確定した
独りぼっちの苦しみ、辛さを味わってきた薫さんだからこそ
恵さんの気持ちもわかったのかもしれない
独りぼっち……か
そう思うと、この道場にいる人たちはみんな独りだ
でも、それぞれ懸命に生きている
昔は独りだったかもしれない
でも今は違う
人と人との出会いって本当に不思議
独りが集まれば、それは独りじゃなくなる
赤の他人かもしれないけど、どこかで繋がっているような気がする
その夜
恵さんは、私の部屋で寝ることになったのだが
眠ることのできない2人
私たちは向かい合わせになり、お茶を飲んでいた
すると、恵さんが話しかけてきた
「ずっと気になっていたんだけど、その手首の傷……」
恵さんは少し言いづらそうにしていたけど、私は笑って言った
『死ぬたくて、傷をつけたわけじゃないんです』
「………」
『自分が生きているって証がほしくて……。傷をつければ痛みがあって、生きてるって実感持てたから……』
そうすることで、私は私の存在を証明していた
そうすることでしか、証明できなかった
人って不思議な生き物
人間は、“一人”では生きていけるけど“独り”では生きていけない
“独り”は寂しいから、苦しいから
頼る相手を探して、愛する誰かを見つけて
そうして生きている
そうしないと生きていけない
弱くて脆い、単純な生き物
でも、そんな単純な生き物でも、幸せはどこかにあるはずで
それを捜すために、見つけるために、
私たちは迷いながら、生きているんだ
『頼って、いいと思うんです』
「え?」
『ここの人たちはみんな優しくていい人たちばかりだから、頼ったらきっと喜んで力になってくれると思うんです』
人の痛みがわかるひとたちだから
自分の力を自分の為に使わないで、誰かの為に使う人たちだから
『独りで、抱え込まないでください……』
「そう、ね。ありがとう」
一人ひとり、抱えている苦しみは違うかもしれない
でも、分かり合える誰かと出会うことで、その苦しみから解放され
笑える自分に出会えるんじゃないかなって、最近思うようになった
だから恵さんも、苦しみから解放されて、恵さんらしく笑ってほしいと願う
せっかく分かり合える人たちと出会えたのだから