第8章 自傷の傷と心の傷
手を握りしめたとき
頭に重みを感じた
見上げると、そこには相楽さんがいて
私の髪を乱していた
「そう、気を張んな。いざとなったら俺が守ってやるよ」
いたずらっ子みたいな笑顔
私はクスリと笑った
そのあと、軒下から弥彦君が出てきた
全部の話は聞かれていないものの、
彼なりに事態を把握したらしい
小さな剣客は、闘う意志を見せる
どんどん成長しているな、弥彦君
すごい頼もしい
私は、こちらをずっと見ている恵さんに気が付き、彼女の所に行く
彼女の眼は、不安と寂しさが入り混じっているように見えた
『…大丈夫ですよ』
「え?」
『心配しなくても、大丈夫です』
「気を遣ってくれてるの?優しいのね」
『優しくなんか……。ただの卑怯者ですよ』
「卑怯者?」
『!!な、何でもないです』
私は逃げるように、その場を去った
つい、余計なことを言ってしまった
あまりにも、恵さんがあの人に似ていたから
唯一、私のことを理解してくれていた人
大好きで、尊敬もしていた
私の心の支えだった人