第8章 自傷の傷と心の傷
しばらくすると、薫さんが足音を立てずに部屋の前で耳を立てる
気になるよね、どういう話をしているか
そんな彼女に声をかければ、私たちのことが見えていなかったのだろう
案の定、驚く
気になって仕方がない薫さんに、相楽さんは言った
「困ってる奴や訳ありの奴を見ると力にならずにいられない。流浪人としての性分さ。剣は滅法強いくせして、人には滅法弱いだろう、あいつ」
その言葉に、私と薫さんはうなづく
何気、相楽さんは人のことをよく見ている
と、その時、部屋の襖が開いた
「左之、異常はないでござるか」
「おう」
「観柳一派の組織図でござる。目を通しておくでござるよ」
その紙には、緋村さんの字でわかりやすくメモしてあった
私兵団団にもいろんな隊がある
結構大きい組織なんだ
緋村さんが言うには、観柳が雇っている御庭番衆に、この場所は既に割れていると考えた方がいいらしい
「それと、薫殿。訳あって詳細は話せぬでござるが、この先ここで騒動の一つ二つ起きてしまうかも知れぬ。
刃衛の時のようなヘマはもう二度としない。薫殿は必ず拙者が守る」
ずきり、と痛む心
傷つく理由なんてどこにもないのに
相楽さんから詳しいことは聞いた
どんな闘いになるのかは大体わかる
薫さんを巻き込みたくない気持ちはすごくわかる
だからこそ、私は守ってもらおうなんて考えちゃダメ
自分の身は自分で守らないと